2016年5月25日水曜日

労働基準監督署ふたたび

電子書籍の有料配信について、正式に許可が下りました。AmazonのKindleストアで配信中です。

画像をクリックするとKindleストアにとびます

横浜に所用があり、神奈川労働局(厚生労働省の出先機関)の相談窓口の一つである横浜駅西口総合労働相談コーナーが近くにあることがわかりました。

そこで、4月1日付けの人財課発信の通知について見解を聞いておこうか、という程度の気持ちで立ち寄ってみました。

ウェブサイトの案内では
横浜駅西口総合労働相談コーナーは、平日の午後6時30分まで電話や窓口での相談に応じています。
労働局や労働基準監督署内ではなく、独立した相談コーナーですので、お気軽にご利用いただけます。
解雇、配置転換、賃下げ、パワハラ、いじめなど職場でのトラブルの解決を労働局がお手伝いします。
悩んでいるより相談しましょう。
とあったのですが、要件を伝え神奈川労働局として行政指導できないかと尋ねたところ、行政指導をして欲しいという相談であれば所管の労働基準監督署(つまり厚木労働基準監督署)でないとできない、ここで話を聞いて伝えることもできないとのことでした。

トラブルの解決のお手伝いできてないじゃん。

ということで相鉄線と小田急線を乗り継いで久しぶりに厚木労働基準監督署を訪れました。

なお、厚木労働基準監督署は本厚木駅南口にあったのが平成28年1月に北口に移転していました。

労働基準監督署の相談窓口で身分を明かし、来訪目的を告げ内容を説明したところ、窓口で対応した職員では力不足だったようで係長的な席に座っている上席の職員に代わりました。

同じ説明をもう一度繰り返しました。

結果的に、以下のような見解を得ることができました。

  • 大和市役所の振替勤務命令の運用方法は振替勤務命令制度と休日出勤・代休付与の制度を混同しており、そのまま運用されると時間外勤務手当の不払いにつながるおそれがある
  • 地方公務員法第58条第5項(労働基準法、労働安全衛生法、船員法及び船員災害防止活動の促進に関する法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定中第三項の規定により職員に関して適用されるものを適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、地方公共団体の行う労働基準法別表第一第一号から第十号まで及び第十三号から第十五号までに掲げる事業に従事する職員の場合を除き、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長)が行うものとする。)により、一般職の地方公務員についての労働基準監督機関の職権は労働基準監督署にはなく行政指導もできない
  • 4月1日付けの人財課通知は現業職の職員も除外されてはいないため、この通知に基づいた運用が行われたことにより現業職の職員に手当の不払いが発生した場合には、その不払いの被害を受けた職員からの相談があれば行政指導を行える可能性はある
  • 実際の不払いが発生していない現時点では何も行わない
ということでした。

電話を一本かけることもできないそうです。

使用者が労働基準法の趣旨から逸脱したルールを一方的に定めていたとしても、実際の被害が発生しない限りは何もしないというのが現状の労働基準監督署の姿勢ということです。

地方公務員法第58条第5項があるので、本来適用されるべき労働基準法を完全に無視したルールや運用があったとしても、人事委員会がない地方公共団体では首長が自分自身に対して監督権限を行使するわけもありません(人事委員会があったとしてもその委員は首長が選んで議会が承認することになるので完全に独立していると言えるかどうかは疑問)。首長性善説ということでしょうか。

hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)の人事院年次報告書に諸外国の公務労使関係の概要というエントリーがありますが、公務員の労働基準監督機関の職権について企業と別の扱いをしているかどうかまでは記述がありませんでした。

例えば、包丁を振り回して無差別に通行人を殺傷しようとしている人がいるとします。

まず、誰も刺されていなければ「労働基準監督署」さんは何もせず傍観します。

実際に被害が出て、刺されたのがたまたま「一般職の地方公務員」という身分であれば、そもそも「労働基準監督署」さんは法律の規定で犯人を取り押さえることはできません。法律では、犯人が自分自身を取り押さえることになっています(余談ですが、被害者が助けを求めた「公平委員会」さんは犯人が正しいと言い、最後に頼った「裁判所」さんも犯人が刺したことこそが正しく、刺された方が間違っているという判断でした)。

もし、刺されたのがたまたま「現業職の地方公務員」という身分であれば「労働基準監督署」さんは犯人を取り押さえようとするかもしれません(実際に被害が出たのであれば)。

そういえば、相談の記録は残すと言っていました。

何年保存か知りませんが、保存年限が過ぎるまでどこかにしまわれてそのまま廃棄されるんだろうと思います。

これが今の労働基準監督署のリアルでした。

人財課からのおかしな通知

電子書籍の有料配信について、正式に許可が下りました。AmazonのKindleストアで配信中です。

画像をクリックするとKindleストアにとびます

平成28年4月1日に人財課長名の電子メールが来て、市の例規通達や一般的な振替勤務命令の運用方法と矛盾する通知をしています。

平成28年4月1日
各課かい長 殿
人財課長

週休日の振替取得等の徹底について(通知)

 このことについて、週休日の振替については、勤務を命ずる日の4週間前の日から8週間後の日までの期間内に取得することとなっていますが、期間内に取得されていない事例が見受けられます。
週休日に振替による勤務を命じる場合には、事前に新たな週休日を指定することが原則であることから、次のとおり通知しますので、周知をお願いします。

【内容】
・週休日の振替、休日の代休指定については、従来と同様、根拠条例規則どおりの運用を図るものとする。
 ・特に期間内の振替指定を徹底するため、平成28年4月1日から、振替命令時に振替後の週休日等を必ず指定することとする。(原則同一週内)
・但し、命令時に、業務上同一週内の指定ができず、職員の希望する日がない場合、振替の期限である8週後の最終日を必ず指定することとし、最終日が到来するまでは、職員の希望等による変更は可能とする。

【根拠条例規則等】
大和市一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する規則第4条及び第21条関係
大和市一般職の職員の勤務時間、休暇等の制度に関する運用基準第2及び第6関係

事務担当:人財課人財育成担当(内XXXX)


おかしいと思う点を箇条書きにします。

  • 「事前に新たな週休日を指定することが原則」とありますが、平成22年3月30日付総務部長名通知「労働基準法等改正及び時間外勤務の縮減の本実施に伴う「時間外等事務」等の変更について(通知)」では、「週休日に勤務命令を行う場合は、必ず命令時に代替となる休みを指定し」とあります。いつから「必ず」から「原則」に弱まったのか、平成22年3月30日からこの通知まで、何かで条件が変わったのか、寡聞にして知りません。
  • 今までだって必ず事前に指定していたはずなのに、何でここであらためて「振替命令時に振替後の週休日等を必ず指定することとする」と言っているのかわかりません。
  • 週休日の振替について、根拠条例規則どおりの運用が行われているのであれば本件訴訟のような「労使慣行」は成立していないはずです。何を言っているのかわかりません。
  • 本件訴訟では、市側は事前に振替休日を指定しないことが職員の利益になると主張していましたが、この通知では「特に期間内の振替指定を徹底するため、平成28年4月1日から、振替命令時に振替後の週休日等を必ず指定することとする」と言っています。方針転換があったんでしょうか。やはり事前に振替休日を指定しないと職員の不利益になると気付いたとでも?
  • 「職員の希望する日がない場合」と言っていますが、あくまで振替勤務命令は「命令」なので、職員の希望なんて関係ないはずです。そもそも人財課はこの制度を理解しているんでしょうか?いつが週休日かは職員の希望など関係なく、職員が「水曜と木曜が週休日がいいなー」といったら土日休みと替えてくれるんでしょうか?
  • 100歩譲って職員の希望も尊重しているというのであれば、代わりになる休みが当分取れそうもない状況であれば無理に振替勤務命令という制度を使わずに休日の時間外勤務命令にすればいいだけの話なのに、それでもなお振替勤務命令という使用者にとってお金をケチれる制度にこだわって「振替の期限である8週後の最終日を必ず指定することとし、最終日が到来するまでは、職員の希望等による変更は可能とする」としているあたり、そもそもの振替勤務命令制度を1ミリもわかっていないことがよくわかります。
察するに、時間外勤務手当の削減が絶対的な命令としてあって、そのために何でも振替勤務命令にしちゃえばいいじゃん、ということになったものの、アクシデント的に訴訟を起こされるわあっちこっちの部署で振替勤務扱いで土日に出勤させたものの振替休日が取れない事例が多発して、人財課にどうすればいいのーっていう相談が来て後始末に困ったんでしょう。

2016年5月14日土曜日

電子書籍配信中です

電子書籍の有料配信について、正式に許可が下りました。AmazonのKindleストアで配信中です。

画像をクリックするとKindleストアにとびます

あわせて、訴訟を提起するにあたって一方的にお世話になった先生方に献本させてくださいというお願いを送りました。とはいえ、皆さんお忙しいと思うのでこちらの一方的な押し付けです。

この情報が誰かにとって少しでも助けになればいいんですが。