2014年1月8日水曜日

本質的には契約関係にあるので結論はどっちでもいい

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ややこのブログの本題からはズレますが、裁判を始めてからずっとモヤモヤしていたことがあります。

私は市役所で働く義務を負い、同時に給料をもらう権利を得ていて、使用者である市長からすると私を働かせる権利があり、同時に給料を払う義務がある、つまり労働者である私と使用者である市長とは一種の労働契約(労働基準法の概念)又は雇用契約(民法の概念)を締結したと考えています。

以前、地裁の書記官から労働審判の申立が不適法却下になる可能性が非常に高いと教えてもらい、通常訴訟を選択せざるを得なくなり、地裁の書記官に「訴状を書いたことないので…」と伝えたところ、時間外手当請求訴訟の訴状の記載例の資料をコピーしていただけました。

記載例の中には、「雇用契約の締結」という項目があり、いつからどのような職種で働き始めたかを記載するようになっていたので、自分の場合に置き換えてそれらしく記載し、訴状を提出しています。

これに対し、市側は答弁書の中で、「雇用契約を締結したとの点は否認し、その余は認める。公務員の任用は行政行為ないしは公法上の関係というべきであり、民間の雇用契約とは異なる。」と主張してきました。

確かに勤務条件などを労使双方の合意のみで決定できないという点では「民間の雇用契約とは異なる」ことは当然ですが、職員と市長が互いに権利を得て同時に義務を負う双務契約である労働契約(雇用契約)を締結していることは当然だと思っていたので、「は?」という感じ。

旅行書士のすずきしんたろうさんが、ブログの記事『バカボンパパの論理』を見かけませんかで述べられていた以下の事項と同方向の論理だと思います。
『バカボンパパの論理』と僕が呼んでいる論理展開があります。労働訴訟で会社側の代表者本人・訴訟代理人から出されることがときどきあります。
簡単に言うと
    当社では契約書に労働者ではないと書いてあるのだから
    本件契約は労働契約ではないことが明白である
というようなもの。
確かに、公益上の要請から必要であれば、市長は職員に対し一時的に法令を超えた働かせ方を命令できる余地はあるのかもしれませんが、この裁判で争っているのは市側はあらかじめ予定していた抜き打ちの非常参集訓練に対して振替勤務命令によることが適法かどうか(時間外勤務命令として扱うべき、時間外勤務手当を支給すべき)であって、災害時に一時的に長時間働かせるようなやむを得ない状況では全くなかったのです。

市側の主張は、必要以上に公務員の労働契約(雇用契約)の特殊性を強調して、結論として公務員なんだから市長の裁量の範囲内である、ということを強調したいのかな、とも思いました(が、後の準備書面で「労使慣行により適法」との主張を展開)。

そんな折、前々から参考にさせていただいていた濱口桂一郎さんはブログの過去の記事、公務員の任用は今でも労働契約であるで、明確に以下のように述べています。
日本国の立法府は公務員は労働契約だという法律を作って以来、一度たりともそれを否定するような法改正をしていないにもかかわらず、行政法学説やら裁判所やらが勝手に法律をねじ曲げて、本来日本の法体系が立脚していない公法私法二元論で説明してきてしまい、それを真に受けた労働行政当局も、もともと大先輩が作った法律は全然そんなことはいっていないのに、新しい法律を作る際には勝手に公務員は適用除外にしてしまってきたというだけなのですね。 
そもそも、公法と私法はそんなにはっきりと断絶しているのかどうか、門外漢の私にはわかりませんが、もし仮に公務員の任用が「行政行為又は公法上の関係」だったとしても、

時間外勤務手当はちゃんと払ってクレ

という結論は変わらないのでまあいいかな、とあいまいなままにしておくあたり、しみじみ自分が日本人であることを感じます。