2016年11月30日水曜日

法令遵守(細かいこと)

大和市では、11月に文化創造拠点シリウスという施設をオープンしています。総事業費が約150億円(大和市民が23万人とすると一人あたり約6万5千円)、指定管理料が年間約8億円(同じく一人あたり約3,500円)だそうです。

鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数は50年とされているので、総事業費を耐用年数で割ると市民一人一年あたり約1,300円。年間の指定管理料と足すと、市民一人あたり年間約4,800円のコストがかかっている施設です。大規模修繕などが必要になったら別途コストがかかります。

そんな施設の最寄り駅からの所要時間ですが、公式サイトでは徒歩3分とされており、担当部署から各部署宛に送信されたメールでも「大和駅から徒歩3分」で統一するよう連絡がありました。

公式サイトにはgoogleマップへのリンクも張ってあり、そのリンクから大和駅までの徒歩による所要時間を検索すると、徒歩6分と出ます

また、不動産業界での一般的なルールとして「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」というものがあり、「第5章 表示基準 第10条 物件の内容・取引条件等に係る表示基準」には徒歩○分というときには分速80mで計算すべし、端数は切り上げて表記すべしという基準があり、450mだと5分37.5秒→切り上げて6分ということのようです。

逆に大和駅の改札口から徒歩3分(=240m)の距離の円を描くと、直線距離ですら施設にかかりません

「駅徒歩3分」では一般的な不動産業界のルールからは逸脱し、さらにそのルールに代わるような他のルールがない以上、ある意味不当表示といっても過言ではないかと思います。そのお達しを出す前に誰も気付かなかったのか、気付いても何も言えなかったのか。重大な過失又は故意によるルール違反と言えるでしょう。些事ではありますが、こういう小さいところに現在の大和市役所の体質が透けて見えてきます。

なお、PHP総研の政策提言「自治体公共施設の有効活用 ~コスト情報から始めるハコモノのバリューアップ~」は自治体職員必読かと思います。市長・副市長・全部長が集まる会議でシリウスオープン後に「シリウスを見てどう思ったか」「シリウスの活用法」をペーパーにして提出せよという宿題が市長から全部長に出されていることを知って個人的にとても寂しい気持ちになりました。

自己申告書

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大和市役所では年末に各職員に自己申告書を作成させ、異動の際の参考資料にしています。
なお、ルール上の自己申告書作成の目的は以下の通りです。

この申告書は、申告者自身が担当職務に対する問題意識を形成し整理すること並びに所属長及び人事主管部長が各職員の適性、希望等を把握し、分担業務の割当、適正配置、問題点の解決等の資料とすることを目的としています。


以前、自己申告書で振替勤務命令の範囲を超えた運用がおかしいと問題提起した際の反応はこちら

さて、今年の自己申告書は真面目に作成することとしました。既成の用紙はA4用紙1枚だけで、とても言いたいことが言えないので別紙をつけて「別紙をご参照ください」としました。

なお、自己申告書上の設問?は、

現在の職務・職場の状況について希望・意見があれば自由に記入してください。
特に、前問で「D」(「時間外勤務の量」は「A」又は「B」)の選択がある場合は、その内容・理由・解決方法等を記入してください。

というものと、自由記述欄として

職務に関して、人事異動、研修についての希望などを自由に記入してください。

というものがありました。

まとめて、以下別紙として添付した文書の内容です。が、きっと今回も黙殺されるものと思います。それでも言うべきことはいうことが全体の奉仕者としての職務であると考えます。

(ここから原文ママ)

平成28年度 自己申告書別紙 職場全体の状況についての意見

 先日受講した公務員倫理研修で、コンプライアンスとは単に法令を遵守していればよいというものではなく顧客の期待に応えることが重要であるという考えが示された。その考え方からすると市長の親族が職員として採用されたことなどは明白かつ重大なコンプライアンス違反で、個人的に数名の知人から「大和市役所はすごいことをするね」と言われたこともある。誰が見ても公平性を疑うような事実そのものに加え、発覚後に公表された市当局の見解も市民の期待に応えるものでは到底なかったと思われる。

 個人的に市を相手に訴訟を起こしていた案件(振替勤務命令の要件)については最終的には市の主張が完全に認められることとなったものの、今年の4月には人財課からの発信で裁判での市の主張とも異なる趣旨の通知を行っている。公平委員会で示された市の当初の主張は勤務日当日の振替勤務命令も事前の範囲に含まれるというもので、裁判に入ってから事後的な振替休日の指定は労使慣行として行われていたものであり職員の健康管理にも資するので有効というものに変わり、裁判でもそのままその主張が認められている。

 他方、4月に人財課から発信された通知では振替休日の指定は事前に行うことを徹底し、事前に指定ができない場合には振替休日を指定できる最後の日にとりあえず決めておき事後に振替休日の変更を認めるというものだった。4月通知の内容は裁判での市の主張と矛盾するだけではなく、労働基準法を所管する厚生労働省が示す制度の趣旨とも明らかに相容れないものであって制度の濫用、時間外勤務手当を極小化するための違法な事務処理であると言わざるを得ない。

 職員の処遇ということでいえば、公務員倫理研修を全員に受講させるきっかけとなった平成23年の収賄事件については研修の際にも言及があったが、平成24年の消防職員の貸与品横流しや今年の盗撮事件については一切言及がなかった。

 なお、消防職員の貸与品横流し事件については懲戒免職という処分が重すぎるとして公平委員会に措置要求が行われ平成26年に停職6か月に修正され、さらにそれでも重すぎるとして訴訟となり昨年11月には横浜地裁で懲戒処分が取り消されたところまでは報道されている。だが、その後追加の報道はされておらず、市が控訴したのか判決を受け入れたのかも不明である。

 コンプライアンスという概念では、不利益な情報も含め組織の情報を積極的かつ公正に開示することで社会への説明責任を果たしていくことが求められているが、本市では何かあっても報道されて初めて知るということが常となっている。

 本市の歪んだ組織風土を表す一例として、東日本大震災後の電力需給の逼迫から本市施設でも節電への協力が求められた際、職員のエレベーター使用自粛はあくまで協力依頼だったはずが職員の義務のようになり、エレベーター内には「本市職員の各階の移動については、原則、階段移動としております」という張り紙がされるようになった。今回の自己申告書を作成するにあたって再度職員服務規程や人財課のイントラネットなどをあたったが、職員にエレベーターの使用を禁止する規定は見当たらず、エレベーターを使用する市民に誤解を与える内容が放置されている。

 中世であればともかく、現代では相手に義務を課し、又は権利を認める際にはルールを明確化することが必要だが、職員が何となく周囲の雰囲気を見て、上司の顔色を窺って、組織の意向に沿うようにして働くことが当たり前になってしまっている。正規の勤務時間より早く働き始め多少残業しても残業代という見返りを求めない、正当な権利の行使としての有給休暇取得時に「ご迷惑をおかけします」と周囲に言う、市当局自身が決めたルールから逸脱した事務処理を求められても何も抗議せず黙っている。このような組織風土の中では「大和市職員であることに誇りを持つ」ことなどは到底できないし、法令の遵守よりも組織への献身を求められる状況では「全体の奉仕者としての責任を持つ」こともできない。現在の状況が適切であると市当局が考えているのであればそのまま何もする必要はないが、もし少しでも問題意識があるのであれば例えばエレベーター内の張り紙をやめるなどの簡単にできることから組織改革・意識改革を始めてはどうかと考える。